眼科通信

眼科通信Vol.155【鼻涙管閉塞】

涙が出て止まらない…うっとうしさを感じることはありませんか?

鼻涙管閉塞とは?
ひと言でいうと、鼻涙管が閉塞して涙液が流れない状態です。
涙は眼頭にある「涙点」という排出口から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通って、
鼻の奥に排出されます。この涙の下水道ともいうべき構造を「涙道」といいます。
この中でも鼻涙管が閉塞して涙液が流れない状態が「鼻涙管閉塞」です。
眼脂(めやに)と涙目が主症状となります。

◆先天鼻涙管閉塞
涙道は胎児の段階で顔面の形成に合わせて発症し、出生の頃に鼻涙管が鼻腔内へ開口します。
出生時に鼻涙管が開口していない状態を「鼻涙管閉塞」といいます。
生下時から生後2週間以内で眼脂や流涙が生じます。

◆後天鼻涙管閉塞
後天性の閉塞は顔面の外傷、角結膜や副鼻腔の炎症、
涙道や副鼻腔の腫瘍、薬剤曝露、長期点眼薬の使用などが原因で発症することがあります。
しかし、原因がはっきりしないことが多く加齢による変化が大きいと考えられます。
女性に多く認められています。

先天鼻涙管閉塞の場合
自然治癒率が90%程度と高く、とくに生後6か月以内に改善することが多いため、
経過観察のみとします。
経過観察中は眼脂や涙を拭き取るだけとし、抗菌薬の使用は最小限とします。
漠然と点眼薬を継続することで耐性菌を作らないように注意が必要です。
眼瞼炎や涙嚢炎など、炎症が強い場合は早めに治療します。

後天性の場合
鼻疾患や腫瘍などの原因があれば、その治療をします。

鼻涙管閉塞の検査
触診で圧迫すると膿性の逆流物が認められます。
涙管通水検査を行うと鼻腔への流れがないことで診断ができます。
細隙灯顕微鏡検査で角結膜上皮を観察します。
ドライアイでは涙液メニスカスといって、
角膜とまぶたの間にたまった涙の高さが低いことが多く見られます。
「涙を止める点眼薬」はありません。
そして鼻涙管閉塞では漠然と点眼薬を投与してはいけません。
なぜなら、点眼では閉塞は治らない上に耐性菌を生じやすくするからです。

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